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「奏は私の何を知りたい?」
「え……」
「なんでも答えるわ」
「…………」


 なんでも。
 きっと、雨は私の疑問になんでも答えてくれる。けれど警察署から帰るまで、少し時間が経ったこともあり、私は冷静さを取り戻していた。
 知らなくちゃいけないと思っていたはずなのに、今では聞かない方がいいんじゃないか。聞いてしまえば、雨が私の側からいなくなるんじゃないかという気がした。
 そんなはずはないのに。


「……あ……ぅ……」


 口を開くけど、その先の言葉が出てこない。それもそのはず、頭の中の整理はできてないし何を話したらいいのかすら浮かんでないのだから。
 俯いては顔を上げ、彼女の顔を伺うように見ると、赤い眼と視線が交わる。
 そんな時、助け舟を出すよう雨は言葉を繋いでくれた。


「……奏。私の眼は怖い? 不気味?」


 視線が合ってしまったからこんなことを聞かれてしまったのかな。
 確かに雨の眼は普通の人でいう黒目の部分が赤く、不思議な色合いをしている。
 でも怖いとか不気味とは違い、私にはすごく綺麗に見えていた。だから正直に告げる。