相手は現役の警官だ。下手な行動なんてしないで、警察署へ着いたら連絡を入れてくれるとも言っている。それからでもいいんじゃないか?


 けど、それはいつになるの? もしも全部、話が終わってからとなるのなら、それはいつなの? 私はあやかのことについて、何も知らない。知らないと言い続けても、ずっと尋問され続けるんじゃ……。


「…………」


 左にいる警官の顔を見る。彼もまた気付き、こちらに目をやるがすぐに私から目を離す。私もすぐに視線を窓の外へ向けた。
 何とも疑っているような顔だった。雨のほとんどわからない表情に比べれば、何を考えているのかが読みやすい。だけど、疑っているだけでどうも警戒はしてなさそうだ。


 私は自分へと言い聞かせる。
 ――私、覚悟を決めるの。雨に連絡を取るの! さぁ……やりなさい!


 固唾を飲み込み、もう一度警官の顔を見る。今度は目を合わせてくれない。
 役に立たないかもしれないが次にフェイクの為、視線を誰もいない助手席の方へ向け、悟られないよう右手でバッグの口へと手を伸ばす。


 チャックがあるが、右足と扉でバッグを挟めば右手だけでも開けられる。
 大丈夫、バレてないはずだ。今度は右窓外の風景を見るようにする。もちろん風景なんて見ている余裕はない。


 手がバッグの中へと入る。後はスマホを探して雨へ電話をかけるだけ。
 画面のつるりとした感覚が私の手へと触れる。


 あった、これでバレないよう雨に――