君のブレスが切れるまで

 もちろん今回の仕事の中身は黒いものじゃない。人との接しがほとんどない普通のアルバイト。あったとしてもその日限り、嫌ならすぐにシャットアウトできる環境。
 しかし、デメリットももちろんある。
 そんなところじゃ高給なんてもらえるはずもなく、かなり安い賃金で働くこととなった。それでも二日ほどフルで働けば一万円近くの収入になり、何かしらのプレゼントは用意できる。
 今はまだプレゼントのことは頭の片隅に置いておく、どこかのお店で目ぼしいものを見つけられれば幸いなんだけど。


 私はマンションのエントランスを出て、今日の献立に頭を切り替えた。
 今日はカレーにしよう。小さい頃は手の込んでいる料理だとは思っていたけど、実際に作ってみると簡単に作れてしまう。
 野菜を切って、炒めて、水を入れ、沸騰したらルー入れて出来上がり。もちろん忘れずに肉も入れないとだけど、マニュアル通りに進めれば恐ろしく簡単にできてしまうのだ。


「仕事も料理もやってみないとわからないものだよね……いろいろと経験不足だな、私は」


 ブツクサと独り言を口ずさみ、次は冷蔵庫の中身のことを考え始める。


 牛肉はまだ冷凍庫に残りがあったから、じゃがいもと人参、玉ねぎ――駅前のお店にいけば事足りるかな。


 目的地が定まり私は駅の方角へと足を向けると、路肩で停車している黒塗りの普通車が目に入った。
 ちらりと一瞬だけ車内の様子を覗く。
 中には二人の男、どうもこっちを見てるみたい。