彼女の予想外の返答に私は驚く。
 なんで謝るの。こんなの暴論じゃない。貴女の何が悪いっていうの? 不吉なことが起こるとかデタラメでしょ。そんな特殊なことは普通の人間には起こせないんだよ。


「もういい、帰る」


 私は彼女の差し出すハンカチを受け取らず、立ち上がる。
 雨は上がってないけど、さっきよりは小雨になってる。あんまり濡れたりはしないはず。


「そう。さよなら」


 歩いていく私の背中に彼女はそう告げてきた。でも、私は振り返らない。
 変な人、一体何が目的だったんだろう。無表情で何を考えているのかわからないあの眼、不気味なほどだ。あれだけ不気味なら噂の一つや二つたってもおかしくないのかもしれない。


 私は彼女との出会いを忘れていた。入学式の日、もしかしたら友達になれるかもしれないと思ったことはいじめと暴力により、もう頭に残ってすらいなかった。