そういうと彼女は大人しくその場から立ち上がり、入れ替わりで私がその場の掃除を始めた。
 ここからでは見えないけど、近くに雨がいる気配を感じる。ダイニングテーブルに座っているのかもしれない。


「傷は深くない? 大丈夫?」
「ええ、割れた拍子に破片が手に飛んできたみたいで、右手の甲を怪我してしまったみたい」
「手の甲? てっきり拾ってる最中に怪我をしたと思ったよ」


 声の近さから思った通り、ダイニングテーブルのところに座っているようだ。


 けど、床に落としたカップの破片が手の甲まで上がってくるかな? 流石に不自然な気もする。


 床に散らばったコーヒーカップの破片を集め、袋へと入れるがもう少し足りない。どこへ行ったのか、見つけておかないとかなり危険だ。


 床では見つからなかったので腰を上げシンクの中を調べると、そこには残りの破片と思われるものがあった。
 カップの取っ手と鋭利な破片。どうやら床で割ってしまったわけじゃなさそう、これなら手に飛んできたというのも頷ける。


「雨が食器を割るなんて、珍しいから驚いたよ」
「急に取っ手の部分が外れてしまって、カップが落ちてしまったの。(すんで)の所で受け止めようとしたのだけど、遅かったみたい」
「無理しちゃダメだよ。傷が残ったら大変なんだから……」