次の日。小学校にて先生が黒板へ文字を書いていく様子を見つつ、あたしは胸の高鳴りを抑えられなかった。あたしはとても優秀な子としてこの学校では通っている。素行も問題はなく、クラスメートからの人望も厚い。
 そして今日、記念すべき初の実験台になってもらうのは、この学校に来て日が浅い宮村(みやむら)という若い女の先生だ。
 彼女が振り向いたところであたしは右手を高くあげ、


『宮村せんせー。聞きたいことがあるんですけどー』


 質問をするように声を掛けた。


『あっ、はい! 早乙女さん、どうしました?』


 キラキラと目を輝かせちゃって、これからあなたはあたしのおもちゃになるんだよ。


『先生って彼氏さんとかいるんですかー?』
『え……?』


 授業とは一切関係のない話、普通ならば空気の読めない子だろうがあたしの狙いはそうじゃない。大事なのはクラスの中心である【あたし】が声を上げることだった。


『うおーそれ気になるー! 先生、彼氏いんのー?』
『私も聞きたーい!』
『教えて教えてー!』
『ま、待って……みんな落ち着いて……』


 わいわいがやがやと授業そっちのけで、話し始めるクラスの子たち。あたしの目的は別に先生のプライベートを聞くことじゃない、この状況を生み出すことだ。
 そして、ある言葉を引き出す。


『静かに……静かにしてっ!』