君のブレスが切れるまで

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 それからは家に戻るまで、そして戻った後も特に彼女に変わった様子はない。私がわからなかっただけかもしれないけど。


 雨は私と違いなんでもできてしまう。勉強も、料理だってそうだ。
 テーブルに向かい合わせで食べた今日の料理、ハンバーグとポテトサラダはとっても美味しい。誰かと一緒に、ちゃんとした料理で食卓を囲むなんていうのは久々で嬉しかった。
 きっと今日の料理も、私一人では到底作れなかっただろう。
 料理があまり上手じゃない私。そんな私と一緒に作ってくれる雨には感謝だけど、こんなことで彼女のためになにかできているのかと不安になる。


「雨、あのさ……」
「ん?」


 手を止め、私の言葉を待ってくれる。
 私が傘を差したあの時、雨は何を考えていたんだろう。聞けば教えてくれるかな。


「……美味しいね。ハンバーグ」
「ええ、奏が一生懸命作ってくれたから」
「雨も一緒だったでしょ?」
「それを言うなら奏も一緒だったじゃない?」
「むぅ……」


 だけど、未だに雨へいろんなことを聞く勇気がないのは自分が臆病で、これ以上仲良くなるのが怖かったからだろう。花火大会のことを伝えられなかったのも、きっとそれが原因だ。
 でも心の中で思うのは自由。
 きっと私は、雨と一緒に花火大会へ行きたいんだ。


 そんなことを考えていると、雨が自分のポケットの中を(まさぐ)り、一つ紙切れを出してくる。
 その紙切れに映っていたものに私は驚きを隠せなかった。


「奏、明日の花火大会。良ければ一緒に行かない?」