§


 今にも降りそうなのに持ちこたえてくれている雨雲を見ながら、自宅のマンション付近まで帰ってこられた。
 空から視線を変え、前を向くと色とりどりのポスターが目に入る。


「あれ……明日、花火大会なんだ」


 電柱に付けられていた明日開催予定の花火大会の広告、どうやらこの近くで開催されるようだ。夜空と花火が彩られたそれを見て、私は笑う。


「……残念だったね、きっと明日も天気は崩れたままだよ」


 人混みは嫌いだし、学校の連中に会う可能性だってある。そういうのと、あまり会いたくはない。家の回りがうるさくなるのも嫌だし、中止になってくれるなら大いに結構。


「…………」


 だけど、どうしてか私は雨と一緒に夜の屋台を回っている想像をしてしまった。そのポスターを見続けていた私の顔は、もう笑ってなんかいなかっただろう。