「奏はこのソファ、気に入った?」
「あ……ううん、思ったより私には合わなかった」


 気に入ったなんて言えば、雨はこのソファを買うかもしれない。それだけは絶対阻止したい、私のわがままみたいなもので買わせるわけにはいかない。
 彼女は私の言葉に目を伏せると、ソファを撫でていた。
 ソファの材質をただ確かめているってわけじゃない。私はその行動に嫌な予感がした。


 雨は私の本当の気持ちをわかってくれる。きっと、だからきっと――この予感は当たってしまう。
 喉をゴクリと鳴らすと、私の瞳に雨が口が動くのが見える。


「でも私はこのソファ、とても気に入ったわ。買いたい」


 ああ……やっぱり、当たってしまった。
 どうして私の心の中の、本当に欲しい言葉がわかっちゃうんだろう。嫌な予感が当たったのに、雨がそう言ってくれるとすごく嬉しかった。


「きょ、今日はテーブルを買いに来ただけだから……その他の物は今度でも」
「それじゃ遅いわ。次に来た時はなくなっているかもしれない」
「だ、だけどさ……こんな重いもの持って帰れな――」
「配達してくれると書いてあるわ」


 当たり前だ、テーブルですら持って帰れないほどの大きさなのに言い訳が苦しすぎる。
 それになんで私はここまで拒否してるの。雨が買いたいって言ってるんだから、買わせてあげたらいいのにどうして。