なんだか温かい、誰かに包まれているようなそんな感じ。
 私はゆっくり目を開けると、そこには――


「奏、気がついた?」
「雨……? あれ、私……」


 私は雨の腕に抱かれていることに気がつく。
 この温もりは雨の体温だったんだ。
 辺りを見回すと既に辺りは日が落ちて暗く、街頭もところどころに点いていた。どうりで雨の顔がよく見えないわけだ。


「……! 雨、あの女たちは⁉ 怪我とかしてな――痛っ!」


 急に体を動かしたからか、様々なところが痛む。それでも、記憶が途切れる前、雨の姿を見たのは確かだったはず。周りに三人組はいないけど、雨だって酷い目にあったかもしれない。怪我していないかとても心配だった。


「私は大丈夫、少し話したらあの子たちは帰ってくれた。それよりも奏の体の方が心配、応急処置するために少し身体を見てしまったこと、ごめんなさい」


 その言葉に腕と腹部に違和感があることに気がつく。脱がされたはずのセーラー服は着させられ、両腕には湿布、お腹を触れてみると痛みと共に湿布が貼られていることを確認できた。
 雨がなぜ謝ったのか、その理由は恐らく痣だらけの体を見たことに対してだろうけど、今はどうでもいい。とにかく雨が無事でよかった。あの女生徒たちをどうやって言い負かしたのかは気になるけど、本当に雨が無事で……。


 そう思っていると急に私の目が霞み始め、止めどなく涙が溢れてくる。
 きっと今なら、本当の気持ちを伝えられる。そんな気がしていた。