叔父が死んでからはさらに大変だった。中学生の頃から殴られ蹴られで、まともに育てられたとは思ってないけど、叔父は一応私の義父で父親。彼にとって私は最後の親族だった。
 問題となったのは葬儀。実の両親が死んだ時は残してくれたお金があったのもあり、業者へと全部任せることができたから問題はなかった。


 しかし、今回はお金もなく、葬儀の仕組みについて全くわからなかった私は、とても頭を悩ませることとなった。結果的にはお通夜や告別式を挟まずに火葬場に直送で、落ち着いたのだが――


「おまたせ、奏」
「遅いよ、雨」


 マンションの入り口から、白い夏服のセーラーを着た雨が歩いてくる。
 そう、叔父が死んだ後のことは、彼女がいなければ私は何もできなかった。
 葬儀のお金や、身寄りのなくなった私を引き取ってくれたのは雨だった。引き取ってくれるといっても家族になったわけじゃなくて、一つの家に二人で住むという、ルームシェアを申し出てくれたのだ。


 もちろんお金やルームシェア、このことに関して拒否はした。しかし、言葉巧みな説得と絶対に引かない雨の意思、そして頼れる人がいなかった私は最終的に頷く以外の選択を選べなかった。
 前に彼女が言ってた引っ越しというのも一時的に借りていた部屋から、この20階以上はある高層マンションに移動するだけだったみたいで、遠くに行っちゃうってわけじゃなかったみたい。