事務所のドアを開けたら、店長が難しい顔をして、スタッフの男性と見知らぬ年配の男性と話をしていた。
「お疲れ様です」
「あっ、お疲れ様。店内は落ち着いた?」
「はい」
「突然で悪かったね。ありがとう」
「いいえ、また、いつでもお気軽に声かけてください。私はこれでお先に失礼します」
重い空気が漂う事務所のドアを閉めて、ふーと息を吐いた。
私が、急遽、店内のヘルプに出た理由が、見知らぬ男性(お客様と言っていいものか)が万引きをしたところを店長が現行犯で捕まえたからだった。
万引きをした人を見ると、毎回、重い気持ちになるのは、捕まえた方も辛いからだ。
盗られた物を回収して、反省しているから終わりという訳にいかず、警察に連絡しなければならない。
自業自得とはいえ、その人の人生を狂わせることに少しでも関わってしまうのだ。
捕まえたからと、いい気持ちになれないのだ。
できることなら、そんなことはしたくない。
とぼとぼと歩いて店を出ると、見知った車が止まっていった。
運転席から、出てきた人物は昨日も会った人だった。
「晶兄」
「ノンちゃん、お疲れ様」
今日の晶兄は、昨日のスーツ姿と違って私服だった。



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