その感触に、唇がジンジンとしている。
「俺を試す為に煽り話したっていうなら成功だ。嫉妬でおかしくなりそうだよ」
キスされた理由が嫉妬なら、煽るつもりなんてなかった私には嬉しい誤算で、ニヤける口元を無理矢理引き締めて嬉しさを噛み締めた。
晶兄は、何かを耐えるように握り拳を作り、ぎゅっと目を閉じた後、運転席に戻って行った。
その時、バッグミラー越しに見えた彼は笑っていた。
「なんで笑ってるのよ」
「ノンちゃんが可愛いからかな…」
久しぶりに聞いた晶兄の無自覚のたらし文句に、頬が熱くなり、彼から見えないように外の景色を見るふりをしたら、動きだした車は、永楽町とは反対方向に向かって走りだしていた。
「晶兄⁈」
「キープ君には悪いけど、やっぱり今日のデートは諦めて」
えっ、えっ、えーーー
まぁ、ふわふわと浮かれた感情のまま合コンへ行って、今の私は、素敵な出会いがあってもスルーしてそうだ。
天秤にかけても結局、晶兄といる時間の方に比重が重く、結局、素直に従ってしまう。
そして、友達に行けなくなったことをメールで連絡したら、速攻で返ってきた返事は…。
かなりお怒りだ。



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