突然顔を上げた彼女の目には、涙が溜まっていた。

「殺されそうになった時、"死ねる"って思ったんでしょ...死にたかったんでしょ!?なのに私のためだけに生きるなんて、バカじゃないの...!!」

私は吃驚しすぎて、声が出ない。この子のこんな姿を見たのは初めてだ。

「私のせいであなたが苦しむことになるのは...嫌だよ...」

成る程、そういうことか。これは彼女なりの優しさだ。
つまりこういうことだろう。"死ねばこの苦しみから逃れられるのに、私のためだけに生きることを、苦しむほうを選んだのか。私のせいで苦しんでいるようなものじゃないか"、と。
君のせいじゃない。私が自分で選んだことなのに。
人のために生きるのって、ダメな事なのだろうか。それとも、彼女が優しすぎるだけか。