本当に死ぬのか?...いや、死ねるのか...?
一瞬、"あの子"の優しい笑顔が見えた気がした。その目には、光も何もうつっていなかった。
そうだ、私は死んではならない。"あの子"のためにも。
避けようとするが、やはり身体は動かない。どうしようもない。できるのは、自分に「死ぬな」と祈ることのみ。
ぎゅっと目を瞑った。
バキッ!という音とかなりの痛みに、反射的に目を見開く。
音のしたほうを見ると、コイツが持っている木の棒が短くなっていて、側に同じような短い木の棒が転がっている。折れたようだ。
そんなに脆くなっていたのか。折れた衝撃で、あまり痛みは感じなかったみたいだ。

「チィ...!折れやがった!...この辺で勘弁してやる...!次は無ぇからな...!!」

そう言い残し、男は去っていった。
とりあえず、死ななくてよかった。木の棒が折れてくれなかったら、かなり危なかっただろう。
ふと、"あの子"に会いたくなって、その場を後にした。