いつも通りの辛い今日、私はミスをしてしまった。
食器が沢山入っている棚を倒してしまったのだ。
ほぼ全ての食器が割れ、頭が痛くなるような大きな音が部屋中に響いた。
私は棚が倒れた驚きと絶望で、頭が真っ白になっていた。
これまでにしてしまったミスの小さなものはバレずに隠し通せてきたが、これはバレないわけがない。
"逃げなきゃ"。
そう思った。逃げないと殺される、それがわかっていたから。
でも私は死にたいんじゃなかったのか?...いや、もしかしたらどこかで"生きたい"と思っている自分がいるのかもしれない。
私は走った。音の発生源から少しでも遠くに行こうと...
そこから離れることしか頭になかったからか、すれ違うタマシイたちのことなど気にせず、無我夢中で走った。
それがいけなかった。

「おい!!!」

そんな言葉とともに、腕を掴まれた。

「!!!!」

その声にはとても聞き覚えがあった。嫌というほど聞いたその声。忌々しい、耳障りな、私の大大大嫌いな声。
あの男だった。