「何故です」
「なんでもいいから、俺の前だけ」
俺と出掛ける時だけ___彼はそう言って私の右手を掻っ攫うと、手を繋いだまま電車に乗るため引っ張った。
電車に乗るときは痴漢対策なのか、私を護るように立ってくれたし、歩くスピードも合わせたりお手洗いとか飲み物とか色々気にしてくれた。
男の人にこんな風にされるのは初めての出来事だったから、私は何故か変に心臓が五月蝿くて、このまま止まってしまうんじゃないかとさえ思った。
近頃の私というか、心や心臓がおかしい。
___待って、何かの病気なんじゃ…そこまで考えていたとき、時雨さんの「着いた」の声で現実に引き戻された。
「…ここ」



