地元の神社へ初詣に行ったくらいで、年末年始のほとんどを家で過ごした。
正月特有の特別番組を見たり一緒に料理したり買い物したり、真雪もあたしも普段と変わらない。
そうしてとうとう、真雪が働き出す日になってしまった。
「そろそろ行くか」
「うん……」
緊張した面持ちの真雪と一緒に玄関を出る。
駅までの道中、どんな話を振っても上の空な返事しか返ってこなくて、緊張の度合いがただ事じゃないと気づく。
「……大丈夫か?」
「……あんまり大丈夫じゃないかも」
「そんなガチガチにならなくてもさ、あたしの親だし店にも行ったし、楽に構えてろよ」
「…………」
聞こえていないのか、とうとう返事をする余裕もないのか。
青白い顔のまま電車に揺られて、途中の駅で真雪が降りる。
生気のない顔のまま「行ってきます」と手を振られて、無責任に頑張れとは言えなかった。
……本当に大丈夫かよ。
もしかして、父の店で働く気はなかったけど、せっかく紹介してもらったからって断れなかったとか?
あたし、余計なことをした……?
真雪の緊張がうつったみたいに、心の中にもやもやが漂ってくる。

