星空とミルクティー



 父お手製のガトーショコラを食べてあたし達が店を後にする頃には、すでに日が沈みかけていた。

そんなに長居をしたつもりもなかったから、浦島太郎な気分になりながら、来週分の食材を買いにまた駅までの道を歩く。


 これから大量の食材を抱えて帰らなければならないと思うと億劫だ。
だけど明日の日曜は家でだらだらしていたいし、明後日の会社帰りに寄るというのもそれこそ面倒くさい。


 街灯と並ぶ店舗の明かり、通り過ぎる車のヘッドライトを頼りに歩くスピードを早める。
決して身長が低いわけではないのに、あたしが息を切らしているその横で真雪が平然と歩いているのが悔しい。
雪で滑って転べばいいのに。



「汐、なんでそんなに急いでんの」

「早く、買い物終わらせて、家帰りたい」

「じゃあ買い物は明日でいいんじゃない?」

「明日、日曜だし、極力家にいたい。
でも仕事終わりに、行くの、めんどい」

「汐が仕事の間に俺が行っとくよ?」



 願ってもない申し出に足が止まる。
そういやこいつ、日中は普通に家にいるんだった……。
なんであたしこんな、機関車みたいに白い息吐きながら頑張ってんの……。