星空とミルクティー



 頷いて離れていく父の背中を見送る。



「食べたいもの頼めばよかったのに」

「緊張しすぎてメニューが頭に入ってこなかった」



 言いながら、真雪が恥ずかしそうにする。それがおかしかった。

 クラシックが流れる店内、ひとり客が圧倒的に多いからなのか、落ち着いた雰囲気がそうさせているのか、さっきから真雪の口数が少ない。

話しかけようにも、こういうときに限って話題が出てこない。あたしもここへ誰かと来るほうではないから、緊張しているのかもしれない。

 料理が到着するまでの間、あたし達は会話らしい会話をせず、ただひたすらテーブルの上に置かれたお冷を飲んだり、用もないのにメニューをめくったりした。



「お待たせいたしました」



 声の後、目の前に煮込みハンバーグが置かれる。スープやサラダ、ライス付きで。

デミグラスソースの香りが湯気に乗って鼻と胃を刺激する。そこで意外にお腹が空いていたことに気づいた。