彫刻刀を握る手に力がこもる。 鬼はドアの前で立ち止まっているように思えた。一秒一秒が永遠のように思える。 一つ楽に息をすることさえ憚られる。 幸い、鬼は目の前を通り過ぎて二棟に行った。 私が向かっているのとは反対方向だったから、少しして鬼の気配が消えた後、私はすぐにトイレを出て、二棟三階めがけて走った。 スリッパを履いていると音が立つから、脱いで彫刻刀を持つ手とは違う方の片手に持って。