私はその場に固まって、ただ息を殺すことにした。もし、何かあっても、追い詰められて終わるぐらいなら少しぐらいは抵抗しよう。 もういつまでもスマホを片手に祈っている場合じゃない。入川くんは……私のこともう守れないんだから。 誰も私のことなんて守ってくれないんだから。 覚悟はしていても、目には涙が滲んだ。 もう辺りは夜に落ちていく。暗い視界。 すりガラス越しに消火栓の赤いランプが見える。すぐ、それを黒い影が覆った。 すぐ、先に、ドアの前に、鬼が。 ドク、ドク、ドク、ドク 心臓が、震える。