私が名前を呼ぶと、「はい、そうです」と頭上から声が降ってきた。 ああ。そうだ。 入川、入川くん。 鬼じゃないよ。 その瞬間、なんともいえない安堵と喜びが胸の奥から込み上げてきて、また涙が出てきた。 本当に誰でもよかった。 自分勝手でごめんなさいって思っている。 私のことを守ってなんて言わないから。もう本当に、ただそばにいてくれるだけでいいから。 「ごめんなさい……」 泣きながら謝る私に、 「大丈、夫? よかった無事で」 入川くんがそう言ってくれたから、また涙が込み上げてきてしまった。