もう駄目だ、とぎゅっと目を瞑る。 走馬灯もなにもない。なにも思うこともできない。 頭が真っ白で、ただ真っ白で、殺されるときに人はなんにも感じられないんだと思った。 でも、待っていてもナイフで刺されるような、鋭い痛みは訪れなくて。 「旭さん」 私を呼ぶ声に、なにか違和感を感じて目を開く。鬼じゃない? それに、この声。さっき、私のことを呼んで助けてくれた声と同じだ。 視線の先には赤色のスリッパ。そして、そこに書かれていた名前は、私の知っているあの人物だったのである。 「入川くん……」