帰りの電車の中は空いていたから、お喋りをしても周りの人の迷惑にはならなさそうだった。
私はなんとなく腑に落ちなくて、凛上に聞いた。
「思い出を、作ったんだよね、秋ぐらいに。詳しく教えて欲しい」
「三日、四日の話だよ。それにあんまりいい話じゃない。旭が嫌いそうな怖い話」
「......不安、消えるかもしれないじゃん。もしかしたら」
「いいの?」
「いいよ」
ガタンガタンと、一定の間隔で鳴る音と共に体が揺られる。
二人の間は行きの電車の時よりも少しあいていた。揺られて体が触れてドキドキすることももうない。そんなときめきもきっと、異性だからってだけの話だけれど。
それから凛上は、四日間にも及んだある合宿の話をしてくれた。



