最後の悪夢


ガラスが割れる音。まだ、心臓がドキドキしている。

家でもあまり食器を割ることが無いから。それにガラスのコップを割るなんて、なにか不吉な予感がする。別に、それでけがをしたわけでもないから良かったんだけど......。

どこか心に触る嫌な音。こんなに私、ガラスが割れる音、嫌いだったっけ。


「旭?」

「......ごめん、大丈夫。さっきのことにびっくりして」



繫華街は人で賑わっていた。私達はレストランの裏の小さな路地にいた。
そこから大きな通りを見ていた。その中で、何故か一際目を引く黒いフードの男の人が一人いた。

その人がこちらを見つけたような、目が合ったような気がした。その瞬間、背筋に冷たいものが走った。怖くなって反射的に、凛上の裏に隠れて身を縮める。


「どうかした?」

「黒......黒い服......」


震えながら呟く。


「なんで、黒い服?」


凛上がそう言って、私は凛上を見た。不安そうな凛上の顔が目に映る。そして振り返る......不審者でも見たかのような自分の反応。確かにおかしい。

あれ、なんで、私、こんなに怯えているんだろう? 黒い服の人なんてよく見れば、沢山いるのに。