最後の悪夢


「あれ、早いな」


聞き覚えのある声に、反射的に顔を上げる。
ずっと待っていた。この時を。いつからかずっと、この時を、待って。


「今日は来てくれてありがとう」

「ううん。こちらこそ」


彼は「早速だけど」と言って、私の隣に座った。
少し間があった。彼は、私の名前を呼んだ。「旭 みさきさん」と丁寧に、私の名前を呼んだ。


「俺と、付き合ってくれますか」

「はい」


黒色の髪がふわりと揺れる。彼はまた、あの時のように私を抱きしめた。あの時......学校で、ある日突然何故か分からないまま抱きつかれた時のように。


「絶対大切にする」


彼の体からはなんともいえないいい匂いがした。落ち着く匂いだった。どこかでかいだことのある匂い。その声も見た目も、私は嫌いではなかったから。

ただ。


「私も、好きだよ、凛上くん」



私はどうして、この人の事が好きになったんだっけ?