「でもあれは人じゃなかった」
凛上が、情けない声で呟いたのを聞いた。分かっているからこそ辛かった。私はこの人を守りたい。大切にしたい。でも先輩は彼のことを罪だと言った。じゃあ私は罪を犯した人を庇うんだろうか。
少しの間、沈黙があった。ほんの十数秒だった。
沈黙を破ったのは凛上だった。
「催眠はほとんど解けていますよね。もう合宿はある程度終わったんだから」
「そうですよ。皆さんが見ているものはもう本物の世界です」
「わかった」
凛上は、私の前を横切ってステージに続く階段を上った。ダン、ダンとスニーカーが木の板を踏む音が辺りに響いた。そうして凛上がステージに立ち、河井先輩の目の前に立った、その瞬間。



