裸足で濡れた砂の上を歩けば、指と指の間に砂が入る。
昼の日差しに照らされて生暖かくなったそれが、俺の足を溶かすような、それにのまれるような感覚。気持ちがいい。
でも、なんだか、そんな喜びさえもどうでもよくなる。
身体中を熱い血が這いずり回っている。俺は、たぶん凄く、苦しかったんだと思う。
寄せてくる波を力強く踏み潰して、引いていく姿が逃げるように思えて腹が立って。
波打ち際に沿って歩いていけばいくほど、どんどん苦しくなってきた。
「……旭」
限界だった。
少し先を歩いていた旭がこちらに振り返ると、俺は絞り出すような声で言った。
「俺、なんか、すごい……辛いわ。しんどい」
旭はなにかを察したのかもしれない。体調が悪いとかそういうのじゃなくて。なんだろう。なんなんだろう?
自分でもよくわからないけど、冷静になれない。



