最後の悪夢


「調子悪くなったからやめた」

「怪我?」

「そんな感じ」


俺のミスだから。
仕方がない。怪我みたいなもの。



「今は大丈夫なの?」



大丈夫。

ていうかもう走らないって決めたし。

悔しかったけどもういい。俺はここで終わり。高校は陸上できないから。だから大丈夫。安心してよ。

俺もうこれ以上誰にも迷惑をかけないし。このままじゃ俺自身が辛くなってきてしまうからさ、諦めるんだよ。




「凛上くん……?」



心配そうな旭の顔。逆光で暗い影になって、その表情はとても不安そうに見えた。



──そんな顔すんなよ、可哀想とでも言いたいのか。




俺は床に置いていた黒のリモコンを手に取ると、テレビを消して立ち上がった。