心臓がドクドクと脈を打つ。 「おはよう。ぐっすり眠れましたか」 なるべく平静を装って話しかける。 「はい、寝不足でした。ごめんなさい」 旭は申し訳なさそうに頭を少し下げた。たらんと垂れた艶やかな髪。色っぽいな、なんて思った。 「寝不足。なるほど」 「ここまで、運んでくれたんだね。おかみさんから、聞いた」 「ああ……うん」 どういう顔をしたらいいのか分からなかった。恥ずかしいな。……うん、恥ずかしい。 「余計だった?」