最後の悪夢


誰かが見ていてくれる。
俺の頑張りは必ず認められる。ずっと期待していた。

長い戦いだった。結局どれだけもがき苦しもうと、救ってくれる人はいなかった。

頑張れ、走れ、って後押ししてくれる人は誰もいなかった。誰も俺の味方じゃなかった。




「どうしたの? 大丈夫」


宿主の女性が俺をみて、眉を下げて心配した。「大丈夫です」──俺はぼろぼろと涙を溢して泣きながら笑った。泣かずにいられるわけがなかった。

満点の星空が俺を見下ろしていた。

いつか走れるようになりますようにと星にも月にも、何にでも必死に願いを何度もかけた、あの日々が懐かしい。


大丈夫。

もう大丈夫。

俺は頑張ったよ。
今は心が軽くなった気さえする。

もうやっと、俺はこんなにも大好きな「走ること」から、離れられるんだと思うと。