最後の悪夢


俺は嬉しくなった。同時に安心した。
でも旭の声は震えていて、どうしてか、泣いているような気がした。

俺は「大丈夫?」と尋ねた。

倒れたぐらいだから、余程しんどかったのだろう。目を覚まさなくても寝ていたら良かったのに。

それに「ありがとう」なんて。

俺、勝手にこんなところまで連れてきたし、悪いことしてるだろ、絶対。



なんだか気持ちが複雑だった。
遠くから「大丈夫ですか?」と運転手が俺に尋ねてきた。

もう目線の先に見えている旅館からは、和服を着た女性──おそらく宿主なのだろう──が、建物から出てきて運転手と並んで、こちらを心配そうに眺めていた。