「マイ、死んでた。先生助けてくれなかったんだ。私が、ちゃんと、注意してれば死ななかったのに」
繁華街での鬼ごっこの後、シオンが連れていた女の子のことだと分かった。
あの足がなかった女の子。
そうか。そうだったのか。
あいつらは助けようという気持ちすらないのかな、とシオンが鼻で笑うのを聞いていた。シオンの目は潤んでいた。
「会いたいね」
私はなるべくそっと、笑いかけた。
傷つけないように笑った。シオンが嫌いそうな同情だった。でも私にはなにも、他にかける言葉が見つからなかったから。
そしたらシオンの目から一粒、また一粒と透明な雫が流れた。名木田のときと同じ。きれいだな、と素直に思った。
雨上がりに見るあの、草の葉からつうっと垂れて流れる、ガラスみたいな柔らかい露のような。
「そうだねえ」
シオンは顔を手で覆った。
時間が緩やかに、流れていくのを感じる。



