最後の悪夢


エレベーターの扉が閉まる前に、内側にある、4のボタンを押す。


血の気の引いたその細長い指の先には、黒く綺麗にマニキュアが塗られた爪。

手のひらにはべったりと、インクみたいな赤黒い液体がついている。

凛上の背中におぶられた彼女の手のひらを握れば、ぬるぬるとした血で私の手が濡れた。


お腹の辺りのカッターシャツは赤く染まり、ナイフかなにかが刺さったような痕が無数にあった。



エレベーターの扉が閉まる。



静かな空間で凛上が、その背中の上にいる彼女に、優しく笑いかけた。



「頑張れ、花巻」



シオンは苦しそうに目を閉じて、喋らなかった。