「そっちから鍵閉めろ、鬼来てるから」
「鍵閉めたら死ぬぞ!」
「死ぬよ」
名木田は冷静だった。
「でもこれでいい、もう死んでいい」
「......」
「どうせ誰か死ぬ」
凛上は無言で床に落ちたそれを拾い上げる。
そして静かに、扉の鍵を閉めた。
内側からは、それを確認するようにドアノブをさわる音がした。ありがとう、と最後に名木田は言った。
それから少しして、中から、呻くような音や悲鳴が聞こえてきた。私達はとてもじゃないが聞いていられなくて、その場を離れた。
友達だから助けるとか好きだから死なせたくないとかそういうの。そんな単純なこと。
でもすごく勇気がいること。
地獄に飛び込むようなものだ。それでもそこに確かな愛があるのなら、天国?



