ただ、名木田は扉の前で立ち尽くしていた。私達も身構えることもできず、黙ってその時を待っていた。
だが事態は急変する。
「あああああああああ!!!」
扉の中から突然聞こえてきた悲鳴。
「痛い」「やめろ」と連呼する男の子の声。電話越しに聞いたことがあった。今の状況からも容易に、その声の正体は断定できた。
そして名木田が動いた。
手からこぼれ落ちる銀色の光。
名木田は迷いなく扉に向かった。ドアノブを掴み引くと、中に入って内側から鍵を閉めたのである。
何が起こったのか分からないような一瞬の刹那。
それでも我に返った凛上が取り乱したように叫んで、すぐに扉を開けようとして。
「名木田!? おい、おい何してるんだよ!?」
「マジで俺見殺しとか無理だよ!!」
すぐ、名木田の声がした。



