化粧室の一番奥の扉は、閉まっていた。
鬼がいるのではないかと思い驚いたが、それでも大丈夫だと言い聞かせて、なるべく静かに洗面台の前に立った。
自動で流れる水に手をつければ、指の上でゆるゆると透明な液体が踊った。
私の手から静かにこぼれ落ちるそれを、すくって顔に押し付ける。パシャ、と涼しげな音がして、顔全体がびしょびしょに濡れた。
ああ、気持ちいい。
スッキリしたかもしれない。
一回リセットしないといけない。
変なことは考えるな。余計なことを考えれば心が汚れていく。
そう思い顔を上げた。
ハンカチが無いから、仕方がない。人目もないから、と制服の袖で顔を拭く。



