キョトンとした河井先輩の声。
何カ月ぶりに聞いただろうか。私は、躊躇わずにその言葉を口にした。
「最後の悪夢、のこと」
沈黙があった。
私は当然その時、どうして先輩が黙っているのかが分からなかった。先輩の気持ちなんて考えていなかったんだ。
〈それはダメ……もう思い出したくない〉
暗いトーンでそう言われても引き下がらなかった。
「お願いです! どんな些細なことでもいいから……!! 安全な場所とか」
〈そんなものないよ!〉
この時が初めてかもしれない。
河井先輩は怒っていた。強い口調だった。
喚くような吠えるような、怒りに震えるような、そんな声で。



