悲鳴、悲鳴、悲鳴。
黒い液体。赤? なんだ?

頭が混乱した。
体の平衡感覚が失われる。
横たわっている死体。血を流し痛みに呻く人。

瓦礫。砂埃。
変な、鉄臭い、臭いがする。



一生忘れないと思う。
いや、忘れないというか




「旭」



心の中から呼びかけるみたいな、はっきりとした声が、私を呼んだ。

意識が覚醒したみたいに、急に夢から覚めたみたいに、はっとして弾けるように顔を上げる。


私は咄嗟に建物と建物の間に逃げて、耳を塞いで目を閉じていたのだ。そうして目を開いたらそこには、凛上が立っていた。