春子先輩と僕。

…見つけた。


そこは、トンネルみたいな遊具の中で、春子先輩のお気に入りの場所。


そういえば最初に話したのもここだったっけ。


こんな狭いところで何してるんだろうって気になって、声を掛けたのが始まりだった。


少しばかり回想に浸っていた時。


ギュッ。


目の前が暗くなって、


首に手が回って。


春子先輩の匂いに包まれる。


聞こえるのは僕の心音と、春子先輩の心音。


それと、春子先輩が鼻をすする音が微かに。


「っぐすっ、もうっ…2度と会えないかと思ったっ…真緒くんっ…うぅ」


「えっ、何で。お…僕は春子先輩の方が僕とはもう会ってくれないんじゃないかってずっと不安でっ。」


春子先輩はもう、僕のことなんて好きじゃないんでしょ?


なのに、何で春子先輩が泣いてるの?



そんなに泣かれたら、僕のこと好きなんじゃないかって、


僕と会えない時間が寂しかったんじゃないかって、


都合よく考えちゃうよ僕、単純だから。


「っううっ、真緒くんっ、真緒くん…」


首に回された腕に込められた力が、僕の名前を呼ぶ度に強くなって。


まるでもう離れさせないとでも言うように。



その力が何を意味するのかは分からないけど、とにかく泣きじゃくる春子先輩を見てられなくて、



僕は首に回された手を退けて、春子先輩を強く、強く抱き締め返した。



その後もしばらく、春子先輩は泣き続けて、いつの間にか僕の腕の中で眠ってしまった。