「なん、で?」


「桜玖は、私のこと、なんとも思ってないもん。私の、片想い」


そんな……。


杉本くんは、なのちゃんといるときすごく楽しそうな顔、するのに。


「告白して、今の関係が崩れちゃうくらいなら、私は告白しない方を選ぶよ」


そう言ったなのちゃんの表情は、目には涙を溜めて今にも泣き出しそうな笑顔だった。


「はい、この話終わり。クリスマス、出かけることになったら教えてね。蘭のメイクとコーディネイトするから!」


元気な声でなのちゃんが言った。


そこには、さっきまでの切なそうなな表情なんてなくて、いつもの明るい、なのちゃんの笑顔だった。


家に帰ってスマホを確認すると、上原くんからの返事はなかった。


「遅い、な」


つぶやいた言葉は、静寂に消えていった。