私、一生上原くんを嫌いになんてなれない。


「もう、一回、呼んで?」


真実がわかって安心したのか、欲望が出てしまう。


「蘭……」


恥ずかしそうに上原くんが呼ぶから、笑ってしまう。


実はね、百合さんは名前なのに私のことは苗字で呼ぶの、嫌だった。


今、こうやって名前を呼んでくれるだけで満足できる。


「帰ろ、蘭」


そう呼んでくれた名前。


それは、まるでこれからずっと名前で呼ぶって宣言されてるみたいで、嬉しかった。


私たちは、手を繋いで公園を出た。


空には、月が輝いていた。