誰よりも近くで笑顔が見たい

知らない女の子たちの声がする。


私も、言わなきゃ。


「が、がんばれ!」


思ったよりも、声が出なかった。


小さくて、弱い声。


聞こえるわけない。


「……っ」


でも、ゴールに向かってボールを蹴る瞬間、ちらっと私の方を見た気がした。


ボールは、斜め上にまっすぐ飛んでいってゴールに吸い込まれていった。


「きゃー!」


「かっこいー!」


黄色い声援が舞う。


そんな声、聞こえていないかのように上原くんはこっちを向いた。


目が、あう。


大きな声が飛び交う中、2人だけの世界にいるような気がした。


彼は、優しく笑ってピースを私に向かって、差し出した。


嬉しくなって、私は帽子を取って笑う。


すると、彼は赤くなって軽く手を上げてゲームに戻っていった。