「上原くん、は、そんな、人じゃ、ない」


上原くんの、好きな人のことを言われたら自然と言葉が出てきた。


「どうせ、その上原ってやつもお前の顔が目当てだろ。話してて、つまんねーとか思ってるよ」


言ってくれた。


上原くんは、無言でも心地いいって。


「思ってねーよ」


後ろから聞こえたのは、いつもより荒い言葉だけど、間違いなくあの人の声。


上原くんの、声。


「お前か、上原って」


上原くんは、頷いてまっすぐ那谷先輩を見た。


「高坂さんから離れてください。どんな関係か知りませんけど、嫌がってる」


上原くんが私の手首を掴む手を掴んで力を込めたのがわかった。


「っ、くそっ」


那谷先輩は、そう言うと私の手首を離して立ち去っていった。


「……ありがとう」