握られていない方の手で髪飾りを握る。


「俺さ、蘭と別れたあとやっぱりお前しかいないって思ったんだ」


思わぬ話に更に身体が固く、動かなくなる。


「だからさ、俺とより戻してくれるか?」


なに、言ってるの……?


「やっぱりお前じゃないとダメなんだよ。ひどいこと言って悪かった、だからもう一回」


私は、無言で首を横に振った。


「はっ?」


それを見て、さっきまでの態度が変わった。


「なんでだよ」


低く、唸るような声に喉が張り付く。


声が、出てこない。


「ほかに好きなやつでもできたか?」


肯定も否定もしずに目を逸らす。


「どうせそいつも、顔だけで近づいてんだろ。誰も喋らないお前となんていても楽しくねーよ」


振られた腹いせ、と言わんばかりの言葉の刃物。