運命の一夜を越えて

瀬川渉の心臓の音が響いてくる。

私は瞳を閉じてその音に耳を傾けた。

規則正しいその音を聞きながら少し鼻の奥がつんとなる・・・



こんなに素直に誰かに甘えるなんて、子供のころ以来だ。


もしも・・・


もしも私が病気にならなかったら・・・

もしも私が病気でこどもが産めない体にならなかったら・・・

普通の女性の・・・当たり前の幸せをつかめることができたなら・・・


こうして誰かに甘えたり・・・素直な気持ちを伝えられたのだろうか・・・