運命の一夜を越えて

「あれこれ考えなくていいから。自分のことだけ考えろよ。」
「・・・」
「目、閉じて。呼ばれたら起こすから。」
「・・・」


まるでその言葉に魔法でもかけたのかと思うほど、不思議と私の体から力が抜けた。


出合ったあの日から本当は気づいていた。

この人の隣はやけに落ち着く・・・
安心してしまう・・・

いつもはもっとうまくつくろえるのに・・・
自分の言葉や感情を繕えなくなってしまう・・・

それはあのラーメン店の雰囲気がいいからじゃない。
居酒屋の雰囲気がいいからじゃない。

瀬川渉。

この人のつくり出す雰囲気が、空気が・・・やけにしっくりと来てしまって、落ち着いてしまうんだ・・・。