運命の一夜を越えて

受付の人に何やらボードを渡されて戻った彼。

「これ、書ける?」
と初診の患者が書く用紙を私に見せた。

私はダウンジャケットを少しずらして手を出し、彼から受け取る。

『カラン・・・』

うまくボードを支えられず、床に落としてしまった私に彼はすかさず、ボードを支えて、私が文字を書きやすいようにしてくれた。

「ありがと・・・」
ちいさな声で感謝を伝えると少しだけ彼が微笑む。

私が簡単に情報をかきこむと「待ってて」と少しずれたジャケットを、再び私の体に巻き付けて、彼は受付にもって行ってくれた。