運命の一夜を越えて

「少し座席、倒すか」
そう言って座席を倒してくれた彼はすぐにハンドルを握る。

「車酔いとかする?」
気遣い120点の彼に私は首を横に振ると、「安全運転で急ぐから」と彼は微笑んで前を向いた。

細くて長い指。
でも女性とは違って少しごつごつしている指。

ハンドルが小さく見えるくらい大きな手。

まっすぐ前を見つめている瞳はやっぱり大きくて、その小さな顔の何割を占めているのだろうかと考えてしまう。

筋の通った高い鼻・・・。


あーこれは完全に体調が悪いせいで頭がおかしくなってる。
きっと今完全なる色眼鏡と、優しさという相乗効果でよく見えてしまっているだけだ。